ESCONとは
ESCONとは
[特性①:超高強度] → 軽量化を実現
圧縮強度150N/mm2以上、曲げ引張強度は普通コンクリートの7~10倍の20N/mm2で、構造部材の軽量化が可能です。[特性②:高耐久] → 長寿命化を実現
硬化体が緻密であるため、塩化物イオンの侵入や中性化の心配がほとんどなく、長寿命化によるライフサイクルコストの削減が可能です。
[特性③:高流動] → 複雑な形状でも製造可能
自己充填性を有するため、超過密配筋のRC部材や複雑な形状、薄い部材についても製作が可能です。
[特性④:劣化抑] → 優れた防腐食性
ESCONは合成繊維により補強されているため、腐食によるコンクリートの劣化の恐れがありません。また、火災時に合成繊維が溶融することで、爆裂の抑制効果が期待できます。
ESCON基本性能
項 目(単位) | ESCONの特性値 | |
---|---|---|
密 度 | g/cm3 | 2.45 |
圧縮強度 | N/mm2 | 150 |
曲げ強度 | N/mm2 | 20 |
引張強度 | N/mm2 | 7.0 |
ひび割れ発生強度 | N/mm2 | 6.8 |
ヤング係数 | N/mm2 | 4.6×104 |
ポアソン比 | 0.2 |
超高強度と高引張力、高流動
水セメント比が極小です
ESCONは、専用の混和剤(高性能減水剤)を用いることにより、極めて水分が少ない状態でも練混ぜ可能な上、高強度と高流動の両立を実現しました。
水セメント比(W/C)
ESCON | 一般的なコンクリート |
---|---|
15% | 45%~55% |
シリカフュームで高強度実現
ESCONは、超微粒子であるシリカフュームを添加していますので、セメント粒子間の間隙を埋め緻密な組織を形成するマイクロフィラー効果により超高度を発現します。
合成繊維による補強効果
ESCONは、補強繊維に一般的な網繊維ではなく、柔軟な合成繊維を配合しています。
そのことにより、高流動性と高充填性を実現しており、超過密配筋のRC部材や薄い部材、複雑な形状に対しても充填が可能です。
また、ひび割れ間でPVA繊維が力を伝達する「架橋効果」が発揮され、そのことにより高引張力と高じん性を実現しました。
高耐久
物質侵入を防御します
透気性
RILEM TC116-PCDに準拠し、φ150mm×50mm供試体を用いた試験を実施。ESCONの透気係数の平均値は4.2×10-20m2でした。「超高強度繊維補強コンクリートの設計・施工指針(案):土木学会(UFC指針(案))」に示されている一般的なコンクリートの透気係数は、ESCONよりも200倍以上大きい1.0×10-17~1.0×10-15m2であることから、ESCONは空気の浸入が極めて少ないコンクリートであるといえます。
透気試験結果種類 | 加圧力 (MPa) |
透気係数 (m2) |
平均値 (m2) |
|
---|---|---|---|---|
ESCON | 1 | 0.15 | 4.1×10-20 | 4.2×10-20 |
0.20 | 2.0×10-20 | |||
0.30 | 1.1×10-20 | |||
2 | 0.15 | 1.0×10-20 | ||
0.20 | 7.2×10-20 | |||
0.30 | 4.2×10-20 | |||
3 | 0.15 | 4.5×10-20 | ||
0.20 | 2.9×10-20 | |||
0.30 | 1.7×10-20 | |||
一般的なコンクリート | 1.0×10-17 ~ 10-15 m2 |
-
試験装置
透水性
透水試験(インプット法)により、ESCONおよび普通コンクリート( 30-15-20N ) ※の透水係数を測定。試験は0.5MPaの圧力を48時間保持して行い、ESCONではまったく水の浸透がなかったため、加圧保持時間を1344時間(56日間)とし、再試験を実施。普通コンクリートでは48時間加圧後の計測で平均1.0cmの水分の浸透が認められました。一方、ESCONでは1344時間後においても水分の浸透はなく、従って拡散係数も得られませんでした。このことからESCONの極めて高い遮水性能が確認されました。
透水試験結果
-
ESCON(1344時間加圧)
-
普通コンクリート(48時間加圧)
ESCONの透水試験結果 (加圧時間1344時間)
供試体の名称 | 加圧時間1344時間 (56日間) | ||
---|---|---|---|
番 号 | 平均浸透深さ(cm) | 拡散係数(cm2/sec) | |
ESCON | Y7 | 0.0 | 0.0 |
Y8 | 0.0 | 0.0 | |
Y9 | 0.0 | 0.0 | |
平均 | 0.0 | 0.0 |
普通コンクリートの透水試験結果(加圧時間48時間)
供試体の名称 | 加圧時間48時間 (2日間) | ||
---|---|---|---|
番 号 | 平均浸透深さ(cm) | 拡散係数(cm2/sec) | |
普通 コンクリート (30-15-20N) |
Y4 | 0.9 | 2.51×10-4 |
Y5 | 1.3 | 5.25×10-4 | |
Y6 | 0.9 | 2.51×10-4 | |
平均 | 1.0 | 3.42×10-4 |
中性化を防止します
JIS A 1153 「コンクリートの促進中性化試験方法」に準じて、ESCONと普通コンクリート(30-15-20N)の促進中性化試験を実施。表およびグラフは促進期間52週における中性化深さの測定結果です。普通コンクリートでは、促進期間52週における中性化深さは19.4mmに達していたのに対し、ESCONでは中性化の進行が認められませんでした。これは、「透気性」および「透水性」で示されたとおり、空気や水の浸入が極めて少ないためです。
促進期間と中性化深さの関係
促進中性化試験結果(促進期間52週)
促進試験期間(週) | 1 | 4 | 8 | 13 | 26 | 52 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
中性化深さ (mm) |
ESCON | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 |
普通コンクリート (30-15-20N) |
2.5 | 4.9 | 7.1 | 9.4 | 14.1 | 19.4 |
促進期間52週後における中性化状況
-
ESCON(中性化深さ 平均0.0mm)
-
普通コンクリート(中性化深さ 平均19.4mm)
塩化物イオンの進入を防御します
電気泳動法
JSCE-G571-2010「電気泳動法によるコンクリート中の塩化物イオンの実行拡散係数試験方法(案)」に準じESCONと普通コンクリート(30-15-20N)の試験を実施。ESCONでは測定期間500日時点においても3供試体中2供試体で、塩化物イオンの移動が認められませんでした。ESCONにおける実効拡散係数は0.00591cm2/年となっており、これは普通コンクリートで計測された値の約1/300であり、極めて小さな値となっています。
[試験概要]
試験は、φ100mm×200mmの円柱供試体の中央部分から厚さ50mmの円盤供試体を切り出し計測しました。塩化物イオンの移動流束および実効拡散係数
供試体の名称 | 番 号 | 塩化物イオンの移動流束 Jcl[ mol/(cm2・年) ] |
実効拡散係数 De(cm2/年) |
||
---|---|---|---|---|---|
各 値 | 平 均 | 各 値 | 平 均 | ||
ESCON | YD7 | 定常状態に至らず | (0.000306) | - | (0.00591) |
YD8 | 定常状態に至らず | - | |||
YD9 | 0.000306 | 0.00591 | |||
普通コンクリート (30-15-20N) |
YD4 | 0.0847 | 0.0894 | 1.78 | 1.91 |
YD5 | 0.0870 | 1.85 | |||
YD6 | 0.0964 | 2.09 |
塩化物イオンの移動流束および実効拡散係数
-
試験供試体
-
サンプリング状況
塩化物イオンの進入に対する抵抗性
JCI-SC2「塩分を含んだコンクリート中における補強用棒鋼の促進腐食試験方法(オートクレーブ法)に準拠して実施。5サイクルの促進腐食によっても補強用棒鋼の腐食はほとんど認められず、ESCONは非常に高い腐食抵抗性を示し、コンクリート中に高濃度の塩化物イオンが存在しても、酸素や水の供給が少なく、鋼材は健全な状態で機能すると判断できます。
-
腐食促進試験後の鋼材状況
(ESCON) -
腐食促進試験後の鋼材状況
(早強ポルトランドセメント)(参考)
鋼材の腐食減量率(5サイクル)
供試体番号 | 鋼材記号 | みがき棒鋼質量(g) | 腐食減少率(wt.%) | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
試験前 | 腐食促進後 | 腐食量 | 各 値 | 平均値 | |||
1 | A | 184.40 | 184.35 | 0.05 | 0.03 | 0.04 | 0.03 |
B | 184.23 | 184.16 | 0.07 | 0.04 | |||
2 | C | 184.42 | 184.38 | 0.04 | 0.02 | 0.03 | |
D | 184.34 | 184.27 | 0.07 | 0.04 | |||
3 | E | 184.87 | 184.81 | 0.06 | 0.03 | 0.03 | |
F | 184.26 | 184.20 | 0.06 | 0.03 |
凍結融解に対して性能低下がありません。
JIS A 1148(A法)「コンクリートの凍結融解試験法(水中凍結融解試験法)」に準じて、ESCONおよび普通コンクリート(30-15-20N)について凍結融解抵抗性の確認を行いました。
下のグラフ及び写真に示すとおり、普通コンクリートでは、300サイクルの時点で質量減少率が-2.0%に達したのに対して、ESCONでは凍結融解サイクル510回においても相対弾性係数の低下および質量の減少は認められませんでした。
土木学会「自己充てん型高強度高耐久コンクリート構造設計・施工指針(案)」では、最低温度や湿潤程度(飽水程度)などの影響をもとに当該危険度に応じた凍結融解回数の関係をまとめています。これによると465回以上の凍結融解抵抗性を有していれば、いずれの凍害危険度においても、期間100年における凍結融解による性能低下はないとしています。このことからもESCONを用いた構造物は、設計耐用年数100年以内に凍結融解作用によって所要性能が低下することはないと判断できます。
平均相対動弾性係数と凍結融解サイクル数の関係
質量減少率と凍結融解サイクル数の関係
ESCON試験供試体
-
試験開始前510サイクル終了後
普通コンクリート試験供試体
-
試験開始前300サイクル終了後
高い耐磨耗性能があります
ASTM C779(水平なコンクリート表面の耐磨耗試験方法)に準じて、ESCONと普通コンクリート(30-15-20N)の試験を実施。ESCONは普通コンクリートに比べて60分経過後において磨耗深さが約50%であり、非常に高い耐磨耗性能を有しています。
経過時間と平均磨耗深さ
乾燥収縮とクリープ係数
ESCONは、水結合材比が極めて低く(W/C=15%)、熱養生を行っていることにより、乾燥収縮はほとんどありません(26週で変化率40×10-4%)。また、載荷後1年後のクリープ係数は早強ポルトランドセメントコンクリートで2.76、ESCONで0.82、ESCONのクリープ係数は1/3以下です。ESCONは、完成後の構造物の乾燥収縮およびクリープによる塑性変形が極めて小さいことも特長のひとつです。
乾燥収縮による長さ変化率
ESCONと早強ポルトランドセメントコンクリートのクリープ係数
高耐衝撃性
ESCONの耐衝撃性能は、供試体厚さ100mmにおいて普通コンクリートに対して6倍以上、富配合コンクリートに対して3倍以上となりました。また、ESCONの背面にゴムを配した供試体では、耐衝撃性の向上とともに衝撃力の分散効果も確認されました。
ポンプ車によるESCONの場所打ち
ESCONの圧送・場所打ちで作業効率が向上します。
ESCONは、圧送前後の品質に変化は無く、一般のコンクリートと同様にポンプ車による圧送と場所打ちができます。
[使用したポンプ車の型式]
三菱重工業製 DC-M700BR
最大吐出圧 : 14MPa
最大吐出量 : 70m3/h
圧縮強度 ( N/mm2) |
ヤング係数 ( N/mm2) |
ポアソン比 | フロー値 (mm) |
空気量 (%) |
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圧送前 | 161 | 47.6 | 0.206 | 332 | 2.23 |
圧送後 | 161 | 45.8 | 0.209 | 330 | 1.6 |
【圧力損失】
直線部の圧力損失は0.072MPa/mとなった。
直線部とベント部における周長あたりの圧力損失には大きな差がなかった。
【配管の清掃性】
圧送後の配管の解体・清掃性について特に問題は見られなかった。